リピートしたい病院に変える、開業医のコミュニケーション術

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開業したものの、来院数が伸びずに頭を抱えている方は多いのではないでしょうか。

患者さんから来院したいと思われるクリニックになるためには、じつは医師のコミュニケーションスキルも重要です。今回の記事では、クリニック経営における医師のコミュニケーションの重要性や、具体的な施策についてご紹介します。明日から実践できるものもあるので、ぜひ参考にしてください。

今、注目は再来患者

なぜ医師のコミュニケーションがクリニック経営に関わるのでしょうか。まずはクリニックの現状と、コミュニケーションスキルを高める目的についてご説明します。

増加するクリニックで生き残るには再来患者がカギ

クリニックの数は年々増加しており、令和4年の医療施設(動態)調査・病院報告では前年比で890施設増加となっています。多くのクリニックの中で自院が安定した来院者数を維持するためには、患者さんに再来してもらうことが肝心です。

再来患者で安定した来院数があれば、口コミが広がれば頻繁な集患対策を行う必要もなくなり、集患に関わる費用も抑えられます。

地域の人のかかりつけ医として日頃から定期的な診察を行うと、患者さんの状態も把握しやすく、満足度の高い医療を提供できるでしょう。結果さらなる信頼を得られ、クリニックと患者さんの良い循環が生まれます。

※1:厚生労働省「令和4年医療施設(動態)調査・病院報告の概要」

他院より選ばれるクリニックへ

他院よりも自院を選んでもらうためには、本来の目的である医療の充実はもちろんですが、ホスピタリティも重要です。

患者さんは不安や悩みを抱えて来院されます。不安な気持ちの中で温かい院内の雰囲気や医師の優しい声がけがあると、「何かあったらまた来たい」と思えるでしょう。反対に医師の対応が冷たく感じたり、話を聞いてもらえないと感じると離れてしまいます。

対患者さんだけでなく、スタッフと医師がしっかりとコミュニケーションを取ることも重要です。連携が円滑になり、患者さんへの対応がスムーズになるのはもちろん、院内の雰囲気も和やかになり、居心地の良いクリニックになります。

このように、医師がコミュニケーションスキルを高めることはクリニック全体に大きく関わり、他院と差別化を図る上で大きな要素となるのです。

『コミュニケーション』を理解する

医師がコミュニケーションを活用するためには、コミュニケーションについて正確に理解しておく必要があります。まずはコミュニケーションとは何かを解説します。

コミュニケーションとは

コミュニケーションとは、感情や意思を伝え合う行為です。クリニックにおいて医師がスタッフや患者さんに向けてコミュニケーションを取る目的は、以下の通りです。

  1. 信頼関係を築く
  2. 適切な情報の伝達
  3. 的確な治療やケアを選択する

コミュニケーションは、伝える手段によって言語的・非言語的の2種類の要素に分けられます。上記の目的を達成するために、状況に応じて双方を活用してください。

言語的なコミュニケーション

言語コミュニケーションとは、バーバルコミュニケーションとも呼ばれ、言葉や文字を使って相手に伝えたり聞くことを指します。

伝える際には相手が理解しやすい言葉や、状態に合わせた気遣いに気をつけると、円滑なコミュニケーションに繋がります。話を聞くときには、ただ聞くだけではなく相槌や質問を交えると、相手も話しやすく感じられるでしょう。

言語コミュニケーションを使いこなすことで、相手に「聞きやすい」「話しやすい」医師だと認識してもらえます。

非言語的なコミュニケーション

非言語コミュニケーションとは、言葉以外の手段で取るコミュニケーションです。バーバルコミュニケーションに対し、ノンバーバルコミュニケーションとも呼ばれます。具体的には、表情やジェスチャー、声のトーン、身だしなみなどです。

人間は言葉での情報以外にも相手のさまざまな要素から印象を感じ取っています。言葉だけが優しくても硬い表情をしていては相手は萎縮してしまうでしょう。

言語コミュニケーションと併せて意識し活用することで、相手からの印象も良くなり、親しみを感じてもらいやすくなります。

コミュニケーションで抑えたいポイント3つ

人とコミュニケーションを取る際に抑えておきたいポイントは以下の3つです。

  1. あいさつ
  2. 伝え方
  3. 聞き方

この中のどれか1つではなく、全てを意識して実践していきましょう。各項目でどのような点に注意すべきか具体的に解説するので、ぜひ明日からの行動に取り入れてみてください。

あいさつは最も簡単なコミュニケーションツール

あいさつは基本的かつ重要なコミュニケーションの方法です。相手の目を見て朗らかな表情で声を掛けると、緊張がほぐれてスムーズに会話を始められます。患者さんだけではなく、院内のスタッフともあいさつし合うことで会話が生まれやすく、自然にコミュニケーションを取れる現場になっていくでしょう。

医療現場においては、大きな声や快活な表情が必ずしも正解とは言えません。患者さんの気持ちになり、威圧的に感じられない声がけを心がけてください。

伝わる伝え方

コミュニケーションでは、相手がどのように受け取るかが重要なポイントです。伝える側は、伝えたいことが相手に正確に伝わるよう努力しなければなりません。

表情は相手が萎縮してしまわないよう柔和な印象を与えるよう心がけてください。話すときは、必要に応じて身振り手振りを使いながら、相手に伝わる声で話します。高齢な方には大きな声でゆっくりと話すなど、相手に合わせて伝え方を工夫すると、より伝わりやすくなるでしょう。

聞き上手は話し上手

コミュニケーションを活性化させるためには、相手の話に耳を傾ける「傾聴力」も重要なポイント。傾聴力を高めるためには、態度や表情、声がけなどの配慮が必要です。例えば、相手の目を見たり、体の正面をしっかりと相手に向けると、あなたが聞いていることが明確に伝わります。話を聞くときには黙っているのではなく、適切なタイミングで相槌を打つことで、関心を持っていることも伝わるでしょう。

聞くことが上手な人は相手の気持ちを考えて話せるので、話し上手にもなれます。なかなかうまく話せないと感じる方は、まずはしっかりと聞くことから意識してみてください。

スタッフとの会話でクリニックの雰囲気を作る

医師のコミュニケーション対象は患者さんだけではありません。受付や看護師などクリニックのスタッフとのコミュニケーションも、クリニックの雰囲気を作る上では欠かせない要素です。スタッフとのコミュニケーションにおけるポイントもご紹介します。

患者さんはスタッフとの関係性も見ている

クリニックに来院する患者さんは、医師とスタッフの様子を意外と見ています。いくら患者さんに対して穏やかな医師でも、スタッフに対しては高圧的なところを見ると不安を感じるでしょう。

スタッフの不満に気づくことができなければ、頻繁な離職にも繋がります。スタッフが頻繁に変わるクリニックにも患者さんは良い印象を持たないでしょう。日頃から積極的にコミュニケーションを取ることで院内の風通しが良くなり、安心感のあるクリニックを作れます。

トラブルを防ぎ居心地の良いクリニックに

スタッフと医師のコミュニケーションが不十分なクリニックでは、ミスやトラブルのリスクが高まります。看護師に伝えたことが医師に伝わっていなかったりすると、クリニックへの不満に繋がる恐れがあるためです。スタッフとコミュニケーションを取るときには敬意を持って接し、日頃から会話が生まれやすい関係を築きましょう。

忙しく会話が難しい場合にはホワイトボードやITツールを利用するなど、どんな時でも意思疎通ができる仕組みを考え、トラブル予防をしてみてください。

スタッフとのコミュニケーションチェックリスト

スタッフとコミュニケーションを取る際に注意したいポイントをまとめました。普段の行動で見直せる箇所はないかチェックしてみてください。

  • 自分からあいさつをしているか
  • 指示がいつも命令口調になっていないか
  • スタッフから話しかけられたときに不機嫌な態度をとっていないか
  • 感謝やねぎらいの言葉を伝えているか

クリニック内でコミュニケーションの不足がみられる場合には、まずはあいさつから始めてみましょう。忙しい業務の中でも高圧的な態度で接したり、人前で怒るようなことは避けるべきです。良い働きが見られたときや大変な業務を終えたときには忘れずに感謝やねぎらいの言葉をかけましょう。

患者さんとのコミュニケーションのポイント

患者さんとコミュニケーションを取る際には、相手の不安に寄り添う行動が求められます。不安を解消してもらうことで患者さんはクリニックに対しポジティブな印象を持つでしょう。聞き方と話し方に分けて、会話時に注意したいポイントをご紹介します。

患者さんの不安に耳を傾ける

患者さんを気にかけていることが伝わるよう、まずはしっかりと話を聞いてください。患者さんの話は遮らず、頷きながら聞くなど親身な態度を心がけましょう。前回話したことを織り交ぜると「覚えてもらえている」と感じられるので、会話を簡単にメモしておくのも一つの方法です。

言葉だけではなく、患者さんの表情も観察して心情を察しましょう。沈黙があっても患者さんが言い淀んでいる様子であれば、根気良く言葉を待ってください。

説明や声掛けを丁寧に

医師が患者さんに説明するときには早口になりがちなので、ゆっくりと話す意識を持ちます。専門用語が含まれる話をするときには、患者さんに混乱を与えないよう配慮が必要です。一般市民が理解できる言葉に転換して分かりやすく伝えてください。

診察時の患者さんは緊張状態にあり、情報を記憶しづらい状況にあります。帰宅後に忘れてしまうことを考え、次回来院の予定や重要な話は紙に書いて渡しておくと親切です。

まとめ

医師がコミュニケーションスキルを磨くとクリニックに良い印象を持ってもらえ、再来患者の増加に繋がります。患者さんだけでなく、クリニックで働くスタッフとの関わりも院内の風通しが良くなり、思わぬトラブルを防げるでしょう。

コミュニケーションは日々の積み重ねが求められますが、心がけ次第で変えられます。本記事を読んで課題を感じた方は、まずは明日の朝、気持ちの良い挨拶から始めてみてください。

 

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