離職をストップ!働き続けたいクリニックの作り方
- クリニック運営
目次
採用したスタッフがなかなか続かずにすぐに辞めてしまうことはありませんか?
クリニック経営において、離職率が高い状態は大きな課題になります。この記事では、離職率がクリニック運営に与える影響、離職率引き下げの必要性から具体的に取り組める施策まで詳しくご紹介します。
現在はスタッフが安定して勤務しており課題が顕在化していない場合も、職場の満足度向上のためにぜひ最後まで読んで参考にしてください。
医療業界の離職の現状とは
まずは医療業界の離職状況や、離職率について解説します。自院の状況も重要ですが、その前に業界はどのようになっているのか、現状を把握しましょう。
離職されやすい業界、医療
医療業界は他業種と比べて離職率が高い業種です。産業別の新規学卒の就職後3年以内離職率(※1)では「医療、福祉」は4位と、高い順位にランクインしていることからも明らかです。
離職率とは、ある時点で働いている人数のうち、一定期間で離職した人の割合のことを指します。2022年の病院看護・助産実態調査(※2)では、正規雇用看護職員の離職率は11.6%、10人に1人が退職しています。さらに都道府県別に見ると、東京都、神奈川県、大阪府では離職率が14%を超えていることが分かるでしょう。
このことから、都心部ではより離職が起こりやすく、課題感を強く持つ必要があると言えます。
転職は同業種間での移動がスタンダード
クリニックで働くスタッフの中でも、看護師は特に同業種への転職が多い職業です。給与水準が高く、苦労して取得した国家資格保持者の立場を活かせる職場を選ぶことが主な要因になります。
現在の職場環境や人間関係の悩みから転職を考える方は、他の病院へ移ることで改善される場合もあるでしょう。看護師以外にも、看護師経験を活かして医療機器メーカーや民間企業に転職する場合もあります。
つまり、医療業界そのものから離れているケースは少ないということ。働きやすい環境であれば、同じ職場にい続ける選択をする可能性が多いにあると言えます。
デメリット:離職率の高さが引き起こす事態とは
経営のおける課題のひとつとしても定番の離職率。
一見離職率の高さは課題に見えますが、職場に合わない人が定着するよりは良いのでは?フレッシュな人材が多い方が好影響がある、という意見もあるのではないでしょうか。
そこでこのパートでは、離職率が上がることでクリニック経営に生じるデメリットを解説します。
外部からの評判に影響する
かかりつけ医として継続的に利用する患者さんが多いクリニックでは、同じスタッフと接する機会が多くなります。受付や看護師は患者にとって医師より身近な存在になることも多く、来院時にまず不安を伝える相手です。頻繁に人が入れ替わるクリニックでは、なかなか信頼性を感じにくいでしょう。
反対に、長く働くスタッフが自分のことを把握してくれるクリニックは安心感があり、印象よく感じられます。
他にも、就職先としてのクリニックの評判低下にも注意が必要です。常に募集をしているクリニックは「職場環境が悪いのでは」との懸念から、希望者が集まりにくくなっていく傾向があります。離職率が高いことが応募への障壁になり、悪循環を生むのです。
業務効率やコミュニケーション状況の悪化
現場のスタッフが実感しやすいデメリットとして、業務への支障が挙げられます。
1人あたりの業務負担が大きく担当領域が広いクリニックでは、スタッフの入れ替わり時にかかる負荷も高くなりがちです。
さらに、頻繁に離職が起きる現場では、スタッフの勤続年数やスキルの差によって業務量の偏りも起こりやすくなり、より全体の効率化に影響が出るでしょう。
また、人員不足に陥った場合には、細かな点まで気を配る余裕がなくなります。コミュニケーションが不足していき、最悪のケースではヒヤリハットや思わぬ医療トラブルが起こることも。
こうなると院内の雰囲気が殺伐と荒んでいってもおかしくありません。採用が間に合わず労働環境が改善されなければ、さらに離職希望者も増えていくでしょう。
採用コスト・教育コストの肥大
人員が不足した状態が続くと、常に採用コストがかかることになります。
採用コストと聞くと、求人サイト等への掲載コストをイメージしている方が多いでしょう。しかし、実際にはそれだけに留まらず、採用に関わる時間や業務負担は全てコストに含まれます。
クリニックでは採用担当を設けず、院長やスタッフが役割を担う場合も多いです。採用のために通常の業務時間を削ることは、クリニックにとっても大きなマイナスになります。
また、新しいスタッフを採用した際には自院のやり方を教育するコストがかかることも、忘れてはならないポイントです。教育は各所に大きな負担になります。
離職率を下げることは、これらのコストを防ぎ、円滑な職場環境を維持する効果が期待できるのです。
クリニックスタッフのよくある離職理由
次に、クリニックで働くスタッフが離職する際に主に理由として挙げられるものをご紹介します。自院の状況とも当てはめて、離職が起こりやすい要因はないか考えてみてください。
業務量や業務内容への不満
スタッフ1人あたりの業務負担が大きくなりがちな現場では、労働環境への不満が大きくなることが多いです。休日が思うように取れないとプライベートの時間が減り、肉体的にも精神的にも疲労した状態が続きがちです。医療業界は女性スタッフが中心になるため、家事育児と仕事を両立する人も多くなります。ワークライフバランスが取りにくいと、ライフスタイルの変化に伴い離職せざるを得ないケースが発生しやすくなるでしょう。
業務量が理由で離職が起こるクリニックでは、1人の離職によって他のスタッフへかかる負担も大きく、さらなる不満を生む可能性も高まります。無理がなく働きやすく感じられる環境への改善が必要です。
人間関係の悩み
クリニックのスタッフは人間関係のトラブルから離職を希望する場合もあります。少人数の現場が多く、看護師や受付、医師など異なる役割の人と連携しなければならないためです。上記でも触れたように、女性中心の現場であることも、人間関係のトラブルを起こしやすい要因になります。
コミュニケーションが円滑に進まない、高圧的な態度を取られるなど、ストレスを感じるとパフォーマンスも低下するでしょう。自分の思うように仕事ができず、必然的に職場への不満に繋がります。とくに新人スタッフは先輩や院長が厳しい、怖いなどの悩みを抱えやすく、続けられないと感じやすいでしょう。
不満の種が人間関係の場合、職場を変えることが状況改善における近道になりやすく、転職に直結しやすい問題です。
現在の仕事にやりがいが感じられない
自分の現状に満足できない、やりがいが感じられないということも、看護師によく見られる離職理由の1つです。
具体的には、雑務の繰り返しばかりでなかなか責任ある仕事を任せてもらえない、などが挙げられます。
本人に意欲があってもクリニックの教育体制が整っていなければ、成長を感じられずにモヤモヤするでしょう。どのようにすれば給与や評価が上がるのかが不明瞭だと、進むべき方向にも迷いが生じ、モチベーションも低下。自分に合わない環境だと感じ、結果的には環境の変化によるキャリアアップやスキルアップの道を選ぶことになります。
スタッフの働きやすい労働環境の整え方
離職を防ぐためには、クリニックのスタッフが働きやすいと感じられる環境を整えることが重要です。具体的な改善法をご紹介するので、自院で見直せるものがないか照らし合わせてみましょう。
辞めたい理由を正確に把握する
まずは闇雲に改善するのではなく、スタッフがどのような理由で離職を考えているのかを把握します。どのような不満を持っているのか定期的にヒアリングすることで、自院の改善点が見えてくるでしょう。
ヒアリングを行う際には、方法にも注意する必要があります。対面では自院を批判するようなことは話しづらく、なかなか正直に不満を打ち明けられない場合もあるでしょう。そこで、デジタルツールなどを利用したアンケートを取ると、よりリアルな意見を集めやすくなります。退職者に連絡してリアルな声を聞くのもおすすめです。
給与体系や福利厚生の見直し
働く上では給与体系や福利厚生も重要なポイントです。給与に関しては、残業や休日勤務など、大変な業務を行ったにも関わらず手当が発生してないという不満も多く見られます。頑張って良かったと感じられる報酬を渡せているか、今一度見直してください。
福利厚生では、住宅手当や育児休暇の充実、スタッフ間のコミュニケーションを深めるレクリエーションなどが挙げられます。手軽に導入できるところでは、スタッフが自由に食べられるお菓子ボックスの設置もおすすめです。
給与体系や福利厚生は職場を選ぶ上でも注目されるため、就職希望者を増やす上でも大きな力になります。まずは至上の平均値と自社を比べて、乖離がないか確かめることからスタートしましょう。
休みやすい雰囲気作り
スタッフが希望通りの休みを取るためには、仕組みだけではなく、休みやすい雰囲気作りにも注力してください。実際に休むと現場が困ってしまったり、他の人が有給を利用していないと、休むことを後ろめたく感じてしまうでしょう。反対に、休むよう声をかけてもらえる、現場のスタッフの数に余裕があるなどの背景があると、休みを取りやすくなります。
日頃からコミュニケーションを取り、休みを申告しやすい関係性を構築しておくことも意識してください。スタッフ数の改善が難しい場合には、デジタルツールなどを導入して業務効率化を図り、負担を減らすことも1つの方法です。
向上心の持てる仕事・環境へ
スタッフがやりがいを持って仕事に臨めるよう、向上心を持てる環境の整備をしましょう。スタッフ教育の前提として、クリニックの理念を明確に伝えておくことが重要です。どのような医療をどのような患者様に提供するのかなど、共通の意識を持つことでクリニック全体に一体感が生まれます。
業務内容に経験やスキルに応じた段階を設けてアップデートの仕組み作りをすると、成長を実感しやすいでしょう。セミナーや勉強会の実施や資格取得の費用負担をすることで、よりチャレンジしやすい環境に変えられます。スキルアップや資格取得時にはボーナスがあったり、現場で責任ある仕事を任せてもらえると、モチベーションややりがいを感じられるでしょう。
まとめ
医療業界は離職が起こりやすく、クリニック経営における課題の常連です。
ここまで述べたように、離職率の低下は経営に対するデメリットが多く、早急な改善が必要です。まずはクリニックで働くスタッフが現状でどのような点に不満を感じているかを明確にしていきましょう。スタッフがいきいきと働くクリニックは患者さんからの印象も良く、クリニック全体を良い空気に変えてくれるはずです。働き続けたいクリニックを目指し、ぜひできることから改善してみてください。
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