【接遇、離職防止、情報管理】クリニックの改善ヒント3点

  • クリニック経営改善

目次

クリニックの開業後、なかなか経営が伸び悩み、困っていませんか? クリニックの経営改善にはさまざまな方法があります。今回はその中でも、資金・会計以外の改善策に注目して、以下の3点をご紹介していきます。

  1. 医療接遇の改善による集患・増患
  2. 働きやすい職場環境を整え、離職率を下げる
  3. デジタルを利用した効率的な情報管理

様々な切り口から、自院の改善点を見つけてみましょう。

1.医療接遇の改善による集患・増患

まず着手しやすい改善策が、医療接遇の改善です。患者さんからの病院に対する印象を変えるだけでも、集患には大きな影響をもたらします。医療接遇の必要性について詳しく説明します。

医療接遇はなぜ大切なのか

医療接遇とは、文字通り医療現場における接遇のことを指します。通常の接遇との違いは、病気による緊張や不安を抱える患者さんへの理解や配慮が必要になる点です。 接遇における基本的な挨拶や身だしなみだけではなく、患者さんの様子や状態を観察し、状況に合わせたコミュニケーションの選択が求められます。

医療接遇が行き届いていると、患者さんだけではなく、働く側にもメリットがあります。 患者さんにとって最適な行動を考えなければならないので、ひとりひとりが主体性を持って働くことになります。クリニックで働く全員が主体性を持つことで、自然に情報の共有も増え、院内の連携も高まっていくでしょう。

また、患者さんに不安がない状態では、トラブルが起こりにくく、仕事の時間効率化や働きやすい環境の構築にも繋がります。つまり、クリニック内に良い循環をもたらすのです。

医療接遇が集患・増患に繋がる理由

2020年の受領行動調査(※1)によると、外来の患者さんが病院を選ぶ理由として、「医師や看護師が親切」を選んだ方は、大病院で10.7%、小病院では18.6%という結果が出ています。

このことから、クリニックでは大病院以上に、患者さんへの親切な対応が求められていることがわかります。

医療接遇を改善することで患者さんは不安や緊張が和らぎ、親切な対応を受けたと感じます。院内で情報が共有されていれば、病院自体への信頼感が増し、安心して通うことができるでしょう。

印象が良い病院は家族や他人にも勧めたくなるので、口コミの増加も期待できます。このことから、医療接遇の改善は集患・増患に少なからず影響をもたらすと考えられます。

※1:厚生労働省「令和2(2020)年受領行動調査(確定数)の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/20/kakutei.html

医療接遇をどのように改善するか

では、接遇の改善のためには具体的にどのような取り組みをすればよいでしょうか。まずは、以下の2点に注意してみましょう。

  • 医療接遇の基本要素
  • 傾聴力を身につける

医療接遇の基本要素

医療機関ではとくに、安全で清潔感のある身だしなみを心がけます。

また、元気な挨拶や声がけが必ず正解とは限りません。患者さんの状態や表情を観察し、不安を感じている方には威圧的にならない優しい声がけや姿勢で接します。受付では、患者さんから直接相談をされなくても、困っていることはないか常に目を向けましょう。必要であればこちらから手助けをしたり声をかけるなど、主体的に行動するよう意識します。

傾聴力を身につける

クリニックに来られる患者さんは悩みや不安を抱えています。そのため、患者さんの話に耳を傾け、寄り添う力が求められます。

傾聴力のトレーニング方法はたくさんありますが、まずは、患者さんの話を遮ったり否定せずに聞くよう意識しましょう。ただ聞いているだけではなく、適切なタイミングで相槌や質問を入れることも大切です。相手に「理解されている」と感じてもらえ、より深く話を引き出せます。

傾聴することで、相手は「話を聞いてもらえる」と病院に対してポジティブな印象を持つことになります。

2.働きやすい職場環境を整え、離職率を下げる

クリニックのスタッフの離職率を下げることも、経営を考える上で大きな課題です。どのように影響するかを理解し、働き続けたい病院になるための改善方法について考えていきましょう。

離職率が経営に与える影響

必要な人数が確保できていれば、離職率が高くても問題ないと考えていませんか?しかし、離職率の増加は、経営にさまざまな悪影響をもたらします。

スタッフの求人のためにかかるコストは、求人媒体への掲載などでかかる金銭コストに留まりません。クリニックでは、院長や医療スタッフが採用業務も行うことが多いので、時間や心理的なコストも負担になります。

さらに、業務効率の低下も大きな問題です。クリニックは少人数のスタッフで運営しているため、個人に求められる業務が多くなりがちです。そのため、スタッフが離職するたびに業務内容の見直しが必要になります。人員が減ることで、1人あたりの負担も増え、院内の生産性が低下していきます。そうなれば、さらなる離職にも繋がるでしょう。

退職者が多く、すぐに人が変わるクリニックは、患者さんも悪い印象を持ちます。職場環境が劣悪なのではないかと口コミが広がれば、集患への影響も避けられません。

離職されないクリニックの特徴

では、クリニックのスタッフには、どのような職場が望まれているのでしょうか。離職されないクリニックの特徴をいくつか挙げていきます。

  • 人間関係が良好
  • 働きが適切に評価される
  • 休みが取りやすい
  • 女性のライフステージに合わせた体制が整っている

院内でコミュニケーションを積極的にとり、風通しのよい職場は、人間関係のトラブルにも気付きやすい傾向にあるようです。多忙になりがちな医療現場ではとくに、働く時間と給料の整合性や、休暇のとりやすい職場は、長期的に働く上で重要視されます。

また、現在でもクリニックは、女性が圧倒的に多い職場。結婚、出産、育児などに合わせた体制が整っていると、安心して働けるでしょう。

離職率を下げるためにできること

離職されないクリニックにするためには、以下のような方法が考えられます。

  • 働きを評価する仕組みをつくる
  • 職場環境や労働環境を見直す
  • 女性を意識した体制を見直す
  • スタッフにヒアリングする

スタッフルームの充実や、休暇の取りやすいシステムなど、働きやすく感じられるよう環境や体制を整えることが有効です。離職率の上昇を抑えられる可能性があります。

ここでは一般的な例を挙げましたが、離職率が高まる原因はクリニックによってさまざまです。ときには経営者にとっては思いがけない理由もあります。どのような不満を抱いているのか、ヒアリングやアンケートで確認するのもひとつの手。より実際的な改善策を検討できるでしょう。

3.デジタルを利用した効率的な情報管理

クリニック経営において、ここ数年で急速にデジタル化が進んでいます。しかし、改めてデジタルの導入の必要性はどのようなところにあるのでしょうか。具体的には何を行うべきかも併せて説明していきます。

デジタル化をするメリット

電子カルテや予約システムなどのデジタルを活用すると、経営でのメリットは以下の3つです。

  • 業務を効率化できる
  • 人件費が削減できる
  • データの管理や共有がスムーズに行える

デジタルを使用した場合には、書く、運ぶ、探すなどの手作業が減ります。急いでいるときの字の乱れや、字の個人差による間違いもなくなるので、情報の伝達が効率的です。さらに、データとして扱いやすいので、医師のみならず、スタッフの負担を軽減し、人件費の削減や勤務時間の短縮も可能になるでしょう。

他にも、ペーパーレスになることで、紙や印刷にかかるコストや保管スペースをなくせます。

患者さんの記録をデータ化しておくことで、デジタル化された紹介病院との連携も、スムーズかつ柔軟に対応できることも大きなメリットです。

クリニックへのデジタル導入例

では、具体的にクリニックが導入できるデジタル化にはどのようなものがあるでしょうか。一部ですが、例を挙げていきます。

  • 電子カルテ
  • Web予約システム
  • 自動精算機
  • オンライン診療を導入する

電子カルテは導入コストの高さから、クリニックでは近年でも半数程度しか普及していません。しかし、上記で挙げたすべてのメリットを最も実感するシステムと言えます。導入ハードルを超えればクリニック経営の強力な味方になってくれるでしょう。

Web予約システムは、現在では多くのクリニックで導入されています。簡単な問診まで済ませられるシステムや、自動精算機も併用して活用することで、待ち時間が大幅に緩和できます。さらに、患者さんとスタッフ双方の感染リスクを抑えられるので、院内の安全を保つことにもなります。

また、コロナ禍になり注目されているオンライン診療の導入も、ひとつの手段です。 移動や時間の都合などを理由に来院に抵抗を持つ方が、医療を受けやすくなり、再診率の向上にも繋がります。

現在はまだ、診療科や患者の制限などの課題もあり、導入できない場合も多い状況です。しかし、厚生労働省によって定期的な見直しが行われており、今後も拡充が進んでいくと予想されます。すぐに導入せずとも、関心は持っておいた方がよいでしょう。

まとめ

この記事ではクリニックの経営改善のための、3点の見直すポイントについてご紹介しました。

  • 患者さんが安心できる医療接遇ができているか
  • 接遇を行うスタッフが働きたいと感じる環境が整備されているか
  • 取り入れることでメリットがあるシステムはないか

まずはこれらをもとに、自院の経営における改善点を模索してください。すべての人が快適に過ごせるクリニックになるよう少しずつ改善し、経営を安定させていきましょう。

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